COLOR'S

小説

あをみたるやうにて

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青い布が私の脳裏をよぎる。

向こうが透けるその布は、ふわっと風にたなびく。麻か薄い木綿か。
その青は日が昇る前の大気の色。
紺とも群青色とも違う、独特な涼しげな色ーー。
 
 
目覚まし時計代わりのスマートホンを見ると6:05だった。5分寝過ごしてしまった。
のっそりと体を起こし、キッチンに行ってやかんを火にかける。
 
翔太を起こさなきゃ・・・洗面所で顔を洗い、翔太の部屋をノックする。
翔太は寝起きがとても悪い。1回の声かけでは起きた試しがない。
「朝よー、朝だよー」騎兵隊のラッパのように声をかけ、やかんを見に行く。
 
笛が鳴るやかんはやかましくて追い立てられるようで好きではないので、うちのやかんは沸騰したら噴きこぼれる。
白い蒸気が噴き出し口からツノを生やしているのを見て、急いで火を止める。
 
もう一度声をかけるとやっと翔太が伸びをしながら起きてきた。
翔太は中学一年生だが、身長はもう175センチもある。私より大きい。
 
2人でパンとコーヒーとスクランブルエッグで簡単な朝食を食べ、それぞれの支度にかかる。
朝はどの家庭でも戦争だ。
だけど私はこの慌ただしさが嫌いではない。
シンプルなシャツに黒のスカートに上着というオフィスカジュアルにさっと着替え、薄いナチュラルメイクを施す。
40代半ばにしては白髪が少ない方かな、などと思ってくるくるドライヤーで髪の裾を軽くカールする。
 
翔太と私はほぼ同時に玄関を出る。
「行ってらっしゃい」の声に振り向きもせずに、「行ってきます」だけボソッと言って、翔太はマンションのロビーを出た。
さて、私も駅へ向かわなくちゃ。
駅までは徒歩で7分、大股で歩く。
満員電車で30分揺られ、10分歩いて会社に到着した。